最終更新日:2024/06/13
近年、人気上昇中のクラフトビールですが、皆さんはお好きですか?
宮城を代表する温泉地、秋保温泉エリアにアメリカ・ウィスコンシン州発のクラフトビールブランド『Great Dane Brewing』がレストランを併設した醸造所(ブリュワリー)が2024年1月にオープンしました。
【グレートデーンブリューイングについて】
グレートデーンは1994年にアメリカのウィスコンシン州で創業しました。「もっと美味しいビールを!」「もっと地域に愛されるビールを!」という想いから生まれたブリュワリーなので、そのビールの美味しさが評判となり、ウィスコンシン州には作りたてのビールを併設のレストランで飲めるブリューパブが5軒あります。創設者の1人でブリューマスターでもあるロブさんが作るビールの味への評価は極めて高く、2012年には全米の年間最優秀醸造家(Brewer of the Year)にも選ばれました。そんなロブさんが作る出来立てのビールを秋保で飲める施設が7年以上の準備期間を経てグランドオープンしました。
グレートデーンブリューイングのシンボルマークは犬種のグレートデーンのシルエットなのですが、こちらの由来は、アメリカのグレートデーンがウィスコンシン州のデーン郡に位置しており、故郷を誇りに思う「グレートデーン(偉大なるデーン)」と、犬のように人間の横にいるパートナーでありたいという想いを掛けているそうです。グレートデーンのマークには、とても素敵な想いが込められているのですね。
【醸造所内】
醸造所内をグレートデーンブリューイングの子安さんに案内していただきました。
原材料置き場にもなっているモルト室。大きなミルがあります。こちらは麦芽粉砕機。ビールの主原料である麦芽を、粉砕機を使って粉砕します。袋に入っている麦芽はアメリカのグレートデーンでも使用しているウィスコンシン州産の高品質な麦芽と同じです。
左からライ麦、ペールモルト、カラメルモルト、ローストモルト
試食させていただいた麦芽は甘くそれだけでも美味しく、焙煎された麦芽は香ばしい味がしました。
粉砕された麦芽はこちらの仕込みタンクに入ります。こちらに温水や米などの副原料も入れて混ぜ合わせます。麦芽に含まれるデンプンを酵素の働きによって糖化します。糖化液の状態になったら、ろ過をしてホップを加えてから、煮沸します。麦汁を煮沸するとホップの苦み成分が溶出されます。
高さのある大きなホットリカータンク。お湯と水が約14000ℓも入っています。
ブリュワーのフィルさん。見上げている様子から、ホットリカータンクの大きさがわかります。
近くにある小さなタンクはパイロットプラントという少量生産用のタンクです。
300ℓ(350mlの缶ビール約1000本分)のビールを生産でき、主に実験的に作るビールやオリジナル商品を作ることも可能となっています。
ちなみにフラッグシップになるグレートラガーのビール製造は1度の仕込みで3000ℓ(350mlの缶ビール約8500本)ものビールが出来上がるとのことです。す、すごい量ですね!
様々な大きさの貯酒タンク。
まずは麦汁を入れた発酵タンクに酵母を加えて、麦汁中の糖分をアルコールと二酸化炭素(炭酸ガス)に分解します。酵母の種類や温度、発酵期間によって、エールビールやラガービールなどの味と香りが異なるビールが作られるのです。その後、こちらの貯酒タンクに移して一定期間じっくり熟成させ、美味しいビールが出来上がります。
発酵が始まったばかりのIPAビールをテイスティングさせていただきました。甘く、ビリっと感があります。この甘さは麦芽の甘さであり、ホップに由来するほのかな苦みとビリビリした感じも味わいました。アルコール度数はほとんどありません。この生まれたてのビールがどのように出来上がっていくのか楽しみです。
ケグと呼ばれているビール樽。こちらにもグレートデーンのロゴが。たくさんの缶が積まれているストッカー。
最後にビールを缶に充填して、パッケージング工程が終了したら、グレートデーンブリューイングの美味しいビールの完成です。
こちらの温度が2度に保たれたウォークインクーラーと呼ばれる部屋にあるのは出来上がったビールが入っているタンク。これがレストランのビールサーバーに繋がっており、出来立てのビールが味わえるという仕組みです。
レストランは2フロアで約80席あります。無骨さと無機質さを兼ね揃えたようなヴィンテージ感のある室内で、インダストリアルな雰囲気があります。一枚板の杉の木のテーブルは重厚感がありますね。こちらのテーブルは創業メンバーでニス塗りをした手作りのテーブルです。中央の存在感のある照明は廃材にエジソンライトをぶら下げて作っています。クラフトビールのレストランだけあって、家具もクラフトというこだわりよう。
グレートデーンのマークが印象的な2階席。こちらの壁面も実はDIY。アメリカからのコンテナの外枠だった木材を解体し、壁に貼り付けて作られています。ペンキも創業メンバーで塗られたそうです。廃材に新たに命を吹き込んで生まれ変わらせ、レストランのあらゆるところに活用して、とてもサステナブルですね!
2階席にはソファー席もあります。プロジェクターも完備されています。貸し切りも可能とのことなので、パーティやセミナー、研修など多様な使い方ができそうです。
トイレは1階と2階それぞれにあります。
壁にはブリューマスターのロブさんが受賞されたメダルがずらりと飾られています。
お食事とお飲み物はカウンターで注文するスタイルです。
レストランでは出来立てのビールを最大16種類楽しめます。
前払い制で現金の他にクレジットとPaypayが使えます。今後は決済方法は増えていく予定です。
GREAT LAGAR(グレートラガー)ALC 5.0% ¥800
11回もの試作を経て作られたグレートデーンのフラッグシップとなるビール。
低温で発酵・熟成されるラガービールなのですが、フローラルなアロマの香りが心地よい、後味が爽やかなビールです。
EVERYDAY IPA(エブリディアイピーエー)ALC 4.7% ¥850
ホップの香りが感じられるライトな飲み心地です。華やかな香りで、ごくごく飲めました。苦みも軽いので、飲みやすさも抜群です。
AZACCA IPA(アザッカアイピーエー)ALC 6.0% ¥900
アザッカという名のホップを使ったIPA。柑橘系のような甘く軽やかな香りが豊かで苦みのバランスがちょうどいいです。のど越しが最高でグビグビ飲むととても美味しいです。
AKIU ONSEN BEER(秋保温泉ビール 湯上がりピルスナー)ALC 5.0% ¥800
秋保温泉旅館組合とのコラボレーションでできた、秋保エリア限定のビールです。
黄金色が美しい、副原料に秋保産のお米を使った軽快な味わいのピルスナーです。
すっきり、さっぱりとした味わいなので、その名の通り、まさに湯上がりに飲むにはぴったりのビールです。
AMBER ALE(アンバーエール)ALC 6.0% ¥850
麦芽のリッチなフレーバーとまろやかな口当たりのエールビールです。7種類のモルトをバランスよく配合しています。モルトと酵母由来の甘い香りが特徴的です。
SCOTCH ALE(スコッチエール) ALC 6.0% ¥900
軽やかなアンバーエールより飲みごたえのあるビール
DATE LITE (ダテライト) ALC 3.7% ¥800
アルコール度数が低めで苦みを抑えたライトな飲み心地のビール
AMERICAN PALE ALE (アメリカンペールエール) ALC 5.5% ¥850
アメリカの伝統的なホップを使ったアメリカ代表のビールスタイル
HAZY IPA (ヘイジーアイピーエー) ALC 7.4% ¥950
アプリコットやトロピカルフルーツのねっとりと強い香り。IPAらしいしっかりした苦みもある重厚なビール
IRISH STOUT(アイリッシュスタウト)ALC 3.9% ¥900
ローストした麦芽を使用して作られているので香ばしい味わいが感じられるビール。きめ細やかでクリーミーな泡がポイント。
ソフトドリンク
オレンジジュース/コーラ/ファンタグレープ/ジンジャエール/烏龍茶/炭酸水/コーヒー ¥450
アルコール度数も様々で、香りや味わいもバラエティに富んだラインナップで、好みの1杯が見つかりそう。
醸造所を眺めながら飲むビールは格別ですので、皆様にも味わってほしいと思います。
お食事はウィスコンシン州で複数のレストランを経営しているシンジさんが監修して作られたメニューです。シンジさんはジェームス・ビアード財団賞の中西部最優秀シェフ賞に何度もノミネートされ、マディソン・フード&ワインショーのデュエル・シェフ・コンクールで3年連続優勝する凄腕の料理人です。
シンジさんはアメリカのビアパブで定番のメニューに宮城の地産地消の食材を掛け合わせた新しいスタイルの料理を考案されました。
写真の料理はウィスコンシン名物「チーズカード」のフライとフレンチフライです。ウィスコンシン州はドイツ移民も多く、ソーセージが有名。酪農も盛んでチーズも名産の1つです。チーズカードはチーズの素のようなもので、蔵王チーズさんに特別に作ってもらっているそうです。ここでもサステナブルなお話が。グレートデーンのビール製造後に出るモルト粕を蔵王チーズさんの牛が食べて、フレッシュなミルクができ、それが美味しいチーズカードに繋がるという自然の好循環が生まれています。
揚げたてのチーズはこのくらい伸びます。弾力のあるチーズで、噛めば噛むほどチーズの旨味を感じます。そのまま食べても美味しいです。バターミルクランチソースに付けて食べるとまた違った味わいが楽しめます。フレンチフライは塩味がメジャーですが、グレードデーンではセロリソルトのフレーバーです。どちらもビールが進む料理です。
※バターミルクランチソース・・・ランチは牧場の意味で、バターミルクのコクと風味が効いたクリーミーなドレッシング
ウィスコンシン ブラッツソーセージ
焼き色が食欲をそそります。グリル前に、ビールとバターと玉ねぎを合わせた調味液で下茹でされています。旨味がぎゅっと閉じ込められているので、ナイフを入れると肉汁が溢れ出します。肉の旨味を感じられ、ビールとの相性も抜群です。ザワークラフトはしっかりとした酸味が良いアクセントになっています。
金華鯖サンド
石巻の金華山沖で取れたブランドの金華鯖に、ヨーグルトソースがかかっているサンドイッチ。金華鯖は脂がのっていてジューシー。鯖はスモークされているので香ばしいです。サンドイッチの付け合わせはフレンチフライかグリーンサラダが選べます。お肉が苦手な方でも美味しく召し上がっていただける1品です。ボリューミーで食べ応えがあるので豪快にかぶりついて食べました。
オイスターポーボーイ
唐揚げのような見た目ですが、こちらは牡蠣です。コーンミールを衣にした三陸産の牡蠣のフライにレムラードソースがかかっています。牡蠣のフライが香ばしく、旨味が凝縮されています。牡蠣の苦みがビールとマッチしています。
※レムラードソース・・・マヨネーズにマスタード、ピクルス、ケイパー、ハーブなどを加えて作ったソース
グレートラガーの缶ビールと、上から右まわりで、ホヤチャウダー、チーズカードのフライ、BBQプルドポークバゲットのせ、バッファローチキンウイング、くまっこ農園の野菜スティック
コーヒーは注文すると、マグの色をお選びいただけます。
スタウトソフトクリーム(¥450)と一緒に楽しんでもいいですね。
マグカップは店舗で購入可能。マグカップ以外にもグレートデーンのロゴ入りTシャツやパーカー、キャップ、グラスなども売っています。
その他の料理もアメリカと地元の食材の融合を感じるようなメニューばかり。ビールに合う、ここでしか味わえない料理がたくさんありますので、皆様にも是非食べてもらいたいです。
※メニュー・価格は1月19日現在のもので今後変更となる場合があります。
クラフトビールは冷凍・冷蔵で保存しなければならないものもあるのですが、グレートデーンブリューイングのビールは常温で9ヶ月保存可能なので、オンラインでも購入できます。公式ホームページ内からご購入ください。なかなか現地に行けない方でもグレードデーンのビールが飲めるのは嬉しいですね。
もちろん現地でも購入できます。
GREAT LAGAR ¥430 / EVERYDAY IPA ¥480 / 湯上がりピルスナー ¥430 / SCOTCH ALE ¥490
グレートデーンブリューイングの広さは敷地面積約5000平方メートル、建物面積約1000平方メートルあります。建物の裏手にはガーデンが広がっており、ペットとともにビールを楽しむこともできます。今後はここに屋外用のテーブルとイスや焚き火台を設置し、バーベキューをしたり、色々な使い方ができるガーデンにする予定とのことですので、そちらも楽しみですね。
【スペシャルインタビュー】
Q:ビール造りの醍醐味を教えていただきたいです。また、グレートデーンのフラッグシップのビールは、日本でどのようなビールになってほしいと思いますか?
A:ロブさん→アメリカのグレートデーンを創業して今年で30年になります。でも30年もビールを作り続けても決して飽きることはありません。クラフトビールの世界をみても、原料の品種も技術も年々進化していますからビール自体がどんどんアップグレードしているといえます。私達のつくるビールのキーワードは「伝統と革新」です。もちろん最新技術を駆使した目新しいものも面白いですが、同時に過去の醸造家に敬意を払った伝統的なビールも伝えていきたいです。フラッグシップであるグレートラガーはラガービールが大好きな日本人に「こんなラガーもあるんだね!」と歓迎されるものに育ってほしいです。
Q:ビール造りへの想いを教えてください。
A:テツさん→ビールには人を繋ぐ力があると思います。グレートデーンブリューイングが秋保にできたこともビールが繋いでくれたご縁です。微生物や酵母など目には見えないものを敬い、発酵の恵みを感じながらビール造りの原点に立ち、この場所に根づいた美味しいビールを造っていきます。ビール造りは職人技です。ビールのアーティストとしての仕事でもあります。美味しいビールを造って人を喜ばせられるエンターテイナーになれるか。グレートデーンブリューイングで飲んだビールが美味しく楽しいひと時だったと感じてもらえるような思い出クリエーターになりたいと思っています。
Q:ビール造りの工程で一番難しいと思うことと、面白いと思うことを教えてください。
A:フィルさん→ビールの原材料は、突き詰めれば麦芽とホップだけです(※副原料を使用しなければ)。
それなのにその品種選びや組み合わせ、あるいは醸造の方法によって全く別物とも思える数々のビールが生まれるところが面白くもあり、難しくもあります。
Q:今後グレートデーンのビールを宮城、東北で、そして日本でどのように育てていきたいと考えますか?
A:子安さん→まずは仙台・宮城の地でしっかり愛されるブランドに育てていきたいです。
ただ同時に高品質な商品を提供し続けることで東北に限らず日本中のビールファンにも飲んでほしいです。
そしてそれをきっかけに、私達のブリュワリーを目的に仙台や宮城に足を運んでくれる人が一人でも増えたら嬉しいです。
シンジさんは、仙台と言えば、牛タン、ずんだ、そしてグレートデーンと言われる日がくるよう地元に根づいたグレートデーンブリューイングにしたいとおっしゃっていました。
クラフトビールをとっても、料理をとっても、施設も、そして想いも、たくさんのこだわりが詰まっているグレートデーンブリューイングであなたも出来立ての美味しいビールを味わってみませんか?
きっと笑顔溢れる幸せなひと時を体験できることでしょう。
【施設詳細】
HP:https://www.greatdanebrewing.jp/
住所:宮城県仙台市太白区秋保町湯元字枇杷原5番地
TEL:022-397-7259
営業時間: 11:00~21:00
レストランラストオーダー 20:30
定休日:不定休
※営業時間、定休日は変更となる場合があります。詳しい詳細は公式HPまたはX(旧twitter)をご確認ください。
お帰りの宮城交通枇杷原2番乗り場は施設の目の前にございます。
タケヤ交通西部ライナー仙台駅行きをご利用のお客様は、秋保グランドホテル前のバス停からお乗りください。
【交通アクセス】
車:東京、山形方面から 仙台南IC下車 約15分
盛岡方面から 仙台宮城IC下車 約15分
タクシー:JR仙山線愛子駅から約10分
公共交通機関:タケヤ交通西部ライナー利用 仙台駅西口63番乗り場より乗車約38分、秋保グランドホテル前下車徒歩5分(運賃860円)
宮城交通利用 県庁市役所前1番乗り場から宮城交通バス 秋保〈長町駅:西多賀経由〉秋保温泉行きに乗車約1時間2分、枇杷原のバス停で下車徒歩約5分(運賃880円)
この記事のライター
ニックネーム/かなこ 塩釜市出身、仙台市在住 元ツアープランナー 国内旅行業務取扱管理者 好きなもの/花、植物、酒、トロンボーン、すずめ踊り、スポーツ観戦 旅行好きの両親のもとに生まれ、旅行好きに育ちました。推しのツーリズムはコミュニティツーリズムと グリーンツーリズムです。 |
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