最終更新日:2024/11/18
イタリアンレストラン、パティスリー&ショコラトリー、宿泊施設が併設された複合施設「HARISO」が10月2日にオープンし、地域の新たな魅力として、人々の賑わいが高まっています。
1 7代目が描く未来への挑戦
仙台市南材木町にある旧針惣旅館は、戦後から1987年まで営業し、詩人・土井晩翠などの著名人も宿泊した歴史ある旅館です。南材木町は仙台と長町の通過点と見られがちですが、実は宿場町としての歴史があり、蔵も多く残る地域です。7代目の針生拓真氏は、この町のポテンシャルを以前から感じており、「地図に残る仕事がしたい」との思いから、旅館の再生に加え、新たなエッセンスを取り入れて地域の魅力を引き出す拠点として、旧針惣旅館をリノベーションし、「HARISO」としてオープンさせました。
HARISOは、旧針惣旅館を現代版にアレンジした複合施設です。かつて昭和の文化人に愛され、多種多様な人々が訪れたこの場所を、より多くの人々に親しんでもらえるように形作られています。
旧針惣旅館の外観は、当時の建物の作りをそのまま残し、訪れる人に懐かしさと新鮮さを印象づけます。道路に面した蔵造りの重厚な佇まいは、どっしりと落ち着いた安定感があり、どこか守られているような安心感を抱かせます。この建物は3.11の震災にも耐え抜き、2017年には「杜の都景観重要建造物」に指定されています。改修には歴史的景観を損なわないため多くの制約がありましたが、耐震補強が施され、利用者が安心して過ごせるリノベーションが行われています。
一歩足を踏み入れるとレトロな昭和の文化が蘇り、和洋折衷のデザインが加わった現代にはない趣を味わえます。訪れる人は、タイムスリップしたかのような感覚に包まれ、建物が語る過去の賑わいと華やかさを想像しながら、懐かしい温もりを感じることでしょう。
正門には創業家の家紋が今もはっきりと残されており、訪れる人々に歴史の深さを静かに語りかけています。
中庭に向かう飛石には、かつて旅館で使われていた石臼の一部が使われるなど、遊び心が感じられます。
瓦屋根や手すりの装飾も美しい和洋折衷の建物が目を引きます。昭和では新しい文化住宅と呼ばれ、訪れた人にタイムスリップしたような感覚やノスタルジックな気持ちを呼び起こし、目を楽しませます。
2 昭和の趣と現代の安心を融合させた宿泊施設「HARISO」
旧針惣旅館が廃業してから40年の時を経て蘇ったHARISO。1日1組限定の貸切宿となっています。イタリアンレストラン「yosemite」と同じ母屋の奥にあります。
日本庭園の奥に進んだ先には、一面美しい漆黒の焼杉で覆われた蔵と母屋に挟まれた小道が現れます。これこそ宿泊施設への入り口です。期待感が一層高まります。
入り口の扉には、旧旅館の屋根材を再利用した銅板が使用されています。様々な色を醸し出す扉はまるで一つの芸術作品のように輝き、訪れる宿泊客を異空間へと誘う特別感があります。扉を開けると、秋保石が敷き詰められたエントランスが目に入り、細部にわたる心配りが、「自分だけ」といった心地良さを感じさせてくれます。
客室は、竹を使った床の間やいろりをアレンジしたテーブルが置かれた縁側、波打つガラス窓(昔の製法により厚さが均一にならずに波打った感じになる)など、旧針惣旅館の趣を残しつつ、モダンなデザインが絶妙に融合しています。
ウェルカムドリンクとして、黄麹と白麹をブレンドした純米酒、鹿児島県知覧町産のお茶、日本では入手困難なホワイトティーが用意されています。枕元には玉虫塗の小物入れが置かれるなど、上品かつ選りすぐりのおもてなしが随所に見られます。
今の規格より明らかに狭い廊下を進むと、懐かしさ漂う浴室の表示が目に入ります。
扉を開けると、一気に現代にタイムスリップしたかのような明るさと広さに一瞬言葉を失います。室内の奥には総ヒノキ造りの浴槽があり、心地よい香りが広がります。新旧が巧みに混在するこの空間で静かにお湯に浸かりながら日常を忘れ、心身ともにリフレッシュする非日常的なバスタイムが体験できそうです。
宿には最大5人まで宿泊できます。静かで特別な時間を過ごしたい方に最適な場所です。歴史ある建物を独り占めに、その魅力に包まれながら、心温まるひとときを体験してみてはいかがでしょうか。
3 和の美とイタリアンが融合した空間で特別なひととき:イタリアンレストラン「yosemite」
築90年の母屋の半分はイタリアンレストラン「yosemite」として、旧針惣旅館の客間に設けられています。営業日は門前にはのれんが下がり、思わず足を止めたくなるような落ち着いた雰囲気を感じます。
レストランはかつて客室であった「松の間」と「桜の間」の襖を取り払った開放的な空間に広がります。足を踏み入れると、まず目に入るのは広々としたオープンキッチン。その横に鎮座する薪窯からは焼きたてピザの香ばしい香りが立ち上り、その周りでは、クリーミーなグラタンや香ばしく炒められるピラフ、コク深いパスタソースの香りがふんわりと漂い、食欲をそそります。
店内を見渡すと桜の幹をあしらった床の間、見事な松の欄間そして縁側の天井に横たわる存在感抜群の1本ものの杉の柱などが当時のまま残されており、まさに和洋の融合を体現しています。
また、大正ロマン漂う個室も利用価値が高く、大きな丸テーブルは当時の旅館で使われていた床材を使用しています。まさに五感で楽しめる空間と言えます。
メニューは「ピッツァ」「グラタン」「ピラフ」「パスタ」を中心に豊富な種類が用意されており、思わず選ぶのに迷ってしまうほどです。これら一皿一皿は、ミシュランシェフが手掛けたもの。彼の豊かな経験と知識が活かされ、細部にまでこだわりが詰まっています。
マルゲリータピッツアとハンバーグオーブンミートスバゲッティを注文。
薪窯でじっくり焼き上げられた「マルゲリータ」は、一口頬張ると生地のもちもち感がしっかりと伝わってきます。トマトソースは甘味と酸味のバランスが絶妙で、モッツァレラチーズもたっぷりと使われているため、濃厚で奥深い味わいが口いっぱいに広がります。焼き立ての香ばしさも相まって、ついつい手が止まらなくなる一枚です。
一方、「ハンバーグオーブンミートスバゲッティ」は、そのネーミングだけで、思わず興味がそそられてしまいます。どんな味なのか気になり注文。たっぷりのボリュームに、どこから手をつけようか迷ってしまいます。濃厚なミートソースとジューシーなハンバーグの上に、コクのあるチーズとクリーミーなホワイトソースがたっぷり。贅沢な味わいが楽しめます。スパゲッティは程よい歯ごたえを残して絶妙な火加減で焼き上げられており、食感と風味のバランスが見事です。
14時30分からはカフェタイムに切り替わります。
パティスリー&ショコラトリー「oxido」のケーキも注文できます。
「ガトーショコラ」と「マカロン」を注文しました。ガトーショコラは下にバニラアイスが添えてあります。一口食べると、まず感じるのはチョコレートの濃厚さ。口の中で滑らかに溶けていき、ビターなチョコレートの風味が広がります。一方のマカロンは、通常、ティーセットの一部として提供されることが多いマカロンですが、単品メニューとして提供しているのは、その美味しさに対する自信の表れですね。ティータイムの特別感が一層高まります。
4 酸化する美、進化する味:パティスリー&ショコラトリー「oxido」
旧奥州街道に面した築130年の蔵はパティスリー&ショコラトリー「oxido」として生まれ変わりました。入り口の引き戸は「HARISO」「yosemite」同様、銅板で覆われ、重厚感が漂います。
「oxido」は、スペイン語で「酸化物」という意味だそう。その名の通り、酸化が他の物質と結びついて変化を生むように、これまでの歴史や伝統と融合させ、新たな価値を生み出していく強い意志を感じさせます。すでに来客者の手垢による変色も見られ、唯一無二の魅力を形づくりつつあります。
天井を見上げると、梁に碍子(がいし)が点々と、むき出しの電線を支えており、懐かしい雰囲気が漂います。本来は白色なのですが、細部へのこだわりが完成度を高め、風情を引き立てます。
ショーケースに並ぶケーキは、どれも美しく輝き、職人のこだわりが感じられます。甘さ控えめな味わいが特徴。
どのケーキも個性があり、一つ一つ味わうたびに異なる風味や食感など、新たな発見が待っていることでしょう。ぜひ、その魅力を味わってください。
ショーケースの上には焼きたてのクロワッサン、タルトフロマージュが並びます。両方いただきました。
クロワッサンは発酵バターと砂糖を贅沢に使って焼いており、外側は香ばしいサクサク感とひと噛みごとに広がるバターのリッチな風味がたまりません。しっとりとした内側とのコントラストが絶妙な一品。
一方、タルト・フロマージュは、サクサクとしたタルト生地に濃厚でクリーミーなチーズクリームがたっぷりと流し込まれ、じっくりと焼き上げられています。タルトの軽やかな食感とチーズのコクが絶妙に絡み合い、一口二口と食べれば食べるほど、豊かな風味と優しい甘さが口いっぱいに広がる贅沢なおいしさ。ぜひ味わってほしい一品です。
5 HARISOの未来展望
HARISOは、歴史と地域への深い思いが結実した場所として、仙台市南材木町の新たなシンボルとなっていくことでしょう。今回足を踏み入れてみて、単なる宿泊施設にとどまらず、地域の文化や伝統を守りながら、地元住民と観光客が触れ合い、コミュニティの絆を深める拠点としての可能性を感じました。
母屋の2階には、今なお多くの貴重な遺産が手つかずのまま保管されており、これらは将来的に大きな価値を生み出す可能性を秘めています。
針生社長は、現在手つかずの土蔵などの歴史的建物の活用を進めており、今後は宿泊施設の増設や一般開放できる施設の整備を通じて、その可能性を広げていきたいと語っています。これにより、地域に新たな魅力を発信し、さらなる発展を目指しています。
針生社長の熱い思いが込められた「HARISO」は、今後ますます地域にとって重要な存在となることでしょう。
さあ、「HARISO」へいってらっしゃい!
―基本情報―
【住所】〒984-0805 宮城県仙台市若林区南材木町75
【WEB】https://hariso.jp
【Instagram】https://www.instagram.com/hariso_official_sdc/
【アクセス】地下鉄「河原町駅」より徒歩3分
【駐車場】車4台駐車可能(満車の場合は近隣のコインパーキング利用)
HARISO
【宿泊】1日1組限定貸切(最大5名)
【チェックイン/チェックアウト】15:00〜18:00 / 11:00
【電話】022-225-1876
【Mail】info@hariso.jp
ピザとパスタのお店“yosemite”
【営業時間】11:30〜20:30(定休日はInstagramで確認)
ランチタイム 11:30〜14:30(ラストオーダー14:00)
カフェタイム 14:30〜17:30
ディナータイム 17:30〜20:30(ラストオーダー20:00)
【電話】022-398-8473
【Instagram】https://www.instagram.com/yosemite.sendai/
パティスリー&ショコラトリー“oxido”
【営業時間】11:00〜19:30(定休日はInstagramで確認)
【電話】022-393-8374
【Instagram】https://www.instagram.com/oxido_sendai/
この記事のライター
ニックネーム/Tori 仙台在住でドローンパイロットをしています。四季折々の美しい風景や霊視ある建物、地元のお店など、ドローンならではの視点から宮城の魅力を発信しています。空から見た宮城の新しい一面を交えながら多くの人に届けたいと思っています。私の記事を通じて宮城県の豊かな自然や文化、温かい人々の魅力を再発見してもらえたらうれしいです。 |
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